不妊治療、年間費用は平均41万円 検査や排卵誘発剤、腹腔鏡手術などの一般不妊治療には保険が適応されるが、体外受精・胚移植、顕微授精、胚凍結などの高度不妊治療には保険が適応されない。また、いつ妊娠するのか見通しがたたないために、いくら費用がかかるかわからないという不安がある。
少子化対策として2004年4月に特定不妊治療助成事業が始まり、「体外受精」と、1個の精子を針で卵子に注入する「顕微授精」に対して、不妊治療以外での妊娠の見込みがないか、極めて少ないと診断された戸籍上の夫婦に、一年度あたり10万円を上限に通算2年まで助成金が支給されるようになった。しかし、2005年9月の厚生労働省が実施した調査では、3県が「実施しない」または「検討中」とし、政令指定都市でも5市が「実施しない」と回答しており、自治体によるばらつきが目立つ。
不妊治療を研究する白井千晶・早稲田大非常勤講師(生殖社会学)の調査で、不妊治療にかかる費用は平均で年間41万円で、治療経験者の3割は高額な治療費を理由に治療を中断したり、治療回数を減らした経験を持っていることがわかった。
調査は2003年1〜2月にかけて、不妊に悩む人たちの団体を通じて行われた。最高額は225万円で、不妊治療開始以来の治療費総額の平均は約153万円。最高額は1500万円だった。
現在の治療の満足度については「満足していない」「あまり満足していない」があわせて39.1%に上り、約4割を占める。 不満の理由(複数回答)では「(妊娠するなどの)納得いく結果を出せない」が43.1%で最も多かったが、「費用」(19%)が2番目に多かった。また、16.1%の人が「治療方針などを医師が十分説明しない」と回答した。
経済的な問題に加えて、不妊症治療には身体的、精神的、社会的、時間的負担が伴う。なかでも、結婚して子供をもうけることが当たり前であるという考えがいまだに主流であること、そして、いつでも妊娠が可能といった技術の発展が生み出した幻想による精神的負担が大きい。不妊症治療中は妊娠への期待と治療失敗という絶望が毎月繰り返され、自分で自分の生活や人生がコントロールできないと感じるために大変不安定な状態になる。そして、涙もろくなったり、イライラしたり、怒りっぽくなったりしても、多くの人が「私が精神的に弱いから」と自分を責め、さらに自信を失っている。
不妊治療の現場では妊娠することが「良いこと」で、それ以外の価値はとかく認められにくい。しかしそのような状況であればこそ、不妊治療を受けているカップルが幸せに生きるために、サポートする側の細やかな配慮がいっそう求められる。
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