邵輝先生: | 東洋医学では食べ物からエネルギーを取り入れると考えます。今は季節感がなく、季節に関係なく食べているので、私たちの体は弱っています。 「薬膳」と聞くと漢方薬を使った何か難しい料理を連想されることが多いですが、「普通の食材」でもいろいろな効果がありますよ。例えば冬瓜は尿をきれいにします。大腸癌の予防や治療にも効果的で、胃腸の弱い人にもお勧めです。解毒力を持った野菜を食べると健康維持に役立ちます。 冬瓜の面白い使い方として、冬瓜の湿布があります。膝の痛みや膝に溜まった水をとるのに、皮がついたままの冬瓜を温めて直接膝の上にのせると痛みが取れます。腰痛にも使えます。 |
追立シェフ: | 家庭でできる薬膳料理は、ぜひ皆さん自身で考えてほしいと思います。「今日は寒いから体を温めるために棗(なつめ)を食べよう」とか「白菜と貝柱を煮込もう」など自由な発想で料理を楽しんでほしいと思います。 私は旬のものを食べることが一番大切であると思っています。なぜなら、その季節の体に一番合っている物ができるからです。私は化学調味料を一切使用しませんし、素材も旬にこだわります。 |
邵輝先生: | その通りだと思います。秋になると咳が出やすくなりますが、秋には咳を止める食べ物がたくさんできます。例えば、中国では咳止めに梨の中を種の部分をくりぬいて氷砂糖と白くらげを詰めて蒸したものをよく食べます。私は枸杞子を入れたり、赤ワインを少し入れたりとアレンジして楽しんでいます。また、みかんの白い筋は咳や痰を取り、風邪の予防になるので取らずに食べたほうがいいですね。 |
追立シェフ: | 同じ日本でも、北海道と九州では食べているものは違います。その土地にあったものができるので土地のものを食べるのは大切なことです。 |
三浦氏: | 地産地消は理にかなっています。「三里以内のものを食べればよい」という言葉があるように、自分が生まれ育った土地のものが体には一番合っています。以前、以前、中国に行った時に4日目からどうしても体が食事を受け付けなくなったことがありました。そんな時に日本食を食べ、体の中にスーッと入っていくのを感じた時、「私の体は米でできているのだなあ」と実感しました。 |
追立シェフ: | 同じ「肉」でも、豚肉と牛肉では、前者は体を冷やすのに対して後者は体を温める等、効果は全く違います。 また、食材の組み合わせによっても効果は変わってきます。例えば、大根をすりおろしたものは胃によいですが、それに蜂蜜を加えるとのどによいです。 今日の料理は夏に疲れてしまった内臓を元気付けるものにしました。よく、「体によい食材は何ですか」と聞かれますが、それは人によって違うので一概に言うことはできません。しかし、食のバランスは常に意識したほうがよいです。例えばステーキを焼く時はニンニクとコショウは必須です。これらは肉の消化を助けて体のバランスを保ちます。これらがないと胃を壊してしまいます。 私は油を調味料として使用しており、山椒油、ねぎ油、ごま油、鳥油などを用います。 |
@ オードブル |
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海老、生春巻き、自家製ベーコン、 むかご、山芋。
海老はねぎと山椒で蒸します。むかごには山芋と同じく精力を高める効果があります。 追立シェフ: きちんと料理を出しているところでは、前菜には必ず酢であえたものが出てきます。これは体に食べる準備をさせ、肝を守るためです。
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A 海鮮スープ |
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上海蟹を使います。蟹は体を冷やすので温めて食します。上海ではショウガと一緒に食べますが、これは蟹が冷性でショウガが温性なのでともに食すと陰陽のバランスが取れるからです。
追立シェフ: 私はスープの出汁に鳥と豚はあまり使いません。かわりに魚の骨の粉末を使います。魚の骨は関節、特に軟骨によいです。スープにとろみをつけることで体を温めることができます。スパイスも使用しますが、今日は年齢層が高めということで刺激の強いものは避けました。
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B 車えびとチキンソーセージのピーナツ炒め |
| ピーナツとカボチャの種は精力を高めます。 ゆり根のつぼみは体を温めます。 邵輝先生: 味のアクセントとしてカボチャの種が使われていますが、これから寒くなるにつれてカボチャはおすすめです。カボチャを食べると胃腸が丈夫になりますので、食欲がなくて体力が落ちている時に、これを回復させます。また、カボチャにはのどや気管を潤し、痛みをやわらげる働きがあります。さらに、毎日カボチャを食べると血糖値が下がることから、「カボチャが糖尿病に効く」と注目が集まっています。 |
C 旬の野菜と紅鳥のカレー風煮込み |
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邵輝先生: 野菜はプチトマト、プチ玉ねぎ、里芋が使われています。里芋はカレーを作るときにジャガイモの代わりに入れてもおいしいです。里芋のネバネバは粘液タンパクといい、抗体を作る原料となります。
三浦氏: 山形には芋煮会という習慣があります。里芋、牛肉、ねぎを煮て食すのですが、これは、里芋の種芋は東北の厳しい冬を越すことができないので、秋のうちに全て食べきってしまうことからきています。ねぎは越冬できるので、昔はねぎを入れませんでした。
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D 白身魚と根菜のオイスターソース甘酢炒め |
| 邵輝先生: トッピングに紅芋を細く切って揚げたものが使われています。中国や日本では黒酢、黒豆、黒豚、黒米、黒ゴマ、黒糖焼酎など黒い食材が人気です。黒い食品は東洋医学でいう「腎」を助けます。腎の働きが十分でないと髪や歯のトラブルや骨粗しょう症、耳なりとなって表れることもあります。 |
E あんかけ焼きそば |
| 海老は長寿、健康を願う食べ物で、腎を強くします。腰痛によいです。海老の殻にはキチンキトサンが豊富に含まれ、免疫力を上げます。イカは補腎と補血です。 |
F 杏仁豆腐のムース仕立て |
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追立シェフ: 杏仁豆腐をムースのように仕上げました。とてもよい赤ワインがあったので、使い切ってしまおうということでゼリーにして添えました。
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