中薬学院日本校 準教授 早川敏弘
寒くなってくると体内に寒邪が入って体内の水が凍り、膝や腰、肩に水が停滞して痛みが悪化します。この季節の痛みやシビレは温灸で温めて、湿をとることで和らぎます。今回は膝の痛みへの温灸法をご紹介します。
変形性関節症はどの関節にも起こりますが、臨床的には特に膝に多く起こります。軟骨が磨耗するために「骨棘(こっきょく)」というトゲができます。そのため正座から立とうとしたり、駅の階段を下りようとしたりする関節の動かし始めに痛みが生じます。最初のうちは動き始めたときだけが痛かったのに、悪化するといつも痛くなります。炎症が起こっているために膝に関節液が溜まり、腫れます。
変形性膝関節症の患者さんは膝の内側に痛みが出ることが多いので、「曲泉(きょくせん)」を温めて詰まった経絡を通じさせます。
<曲泉の位置>
膝を深く曲げた時に膝の内側にできる横紋の内端に取る。
変形性膝関節症の患者さんの膝は冷えています。大腿四頭筋の血液の循環をよくする膝のツボである「犢鼻(とくび)」や「梁丘(りょうきゅう)」に温灸します。
犢鼻や梁丘は足陽明胃経のツボです。中医学では「筋肉が痩せる病気には陽明経から治療する」という原則があります。これらに温灸すれば、利湿といって、体内の余分な湿邪を追い出し、胃から気血を増やすことで筋肉が強くなります。
<犢鼻、梁丘の位置>
犢鼻:膝の皿の真下、6時の方向。
梁丘:膝の皿の外側の角から指3本分上がる。
膝が痛い女性は、足全体に静脈が目立ちます。これは中医学の「オ血(おけつ)」ですが、「血海(けっかい)」に温灸すると「温陽活血(おんようかっけつ)」といって、血の循環を改善してオ血を取ります。また、大腿四頭筋が強くなり、脾胃を健やかにして湿邪を追い出す作用もあります。
松節にも身体を温めて体内に蓄積した冷えた水(湿邪)を取り去る作用があります。しつこい慢性の痛みにはオ血を取る治療が必要です。温灸で体の外から、松節で体の内から働きかけるとよりよい効果が望めます。
<血海の位置> 膝の皿の内側の角から指3本分上がる。
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