70代男性。気管支喘息(肺気虚)、耳鳴り、食欲低下によって体重が落ちた患者さんの舌の変化を観察した。
治療前:
舌質は淡白舌、苔は白滑膩苔、歯痕がある。特に舌の前1/3(上焦)の舌質が薄い灰色だった。ここは肺の部位であり、肺に寒があることを示す。→肺の血流が悪い。
治療後:
手太陰肺経の募穴である中府に10分間温灸をすると、同部位の舌質は淡紅色に近くなり、呼吸が楽になった。→肺の血流が良くなった。
その他にも10数例を観察したところ、中府穴へ温灸をすると、全舌質の色が淡から淡紅へ、暗淡紅から淡紅へ変化する事を確認した。
その理由は、温灸によって手太陰肺経の生理機能が好転したためと考えられる。
<肺の生理機能の特徴>
◎「天の気は肺に通じる」(素問・陰陽応象大論) 環境は肺で感じる。
◎「肺は気を主る」 宗気の作用を指す。宗気は肺の清気・脾の穀気・腎の元気の3つが結合したものである。肺が百脈を朝(あつめ)して、はじめて宗気は咽喉に上循して呼吸を主り、心脈を貫注して全身に散布することができる。
◎「呼吸を主る」 肺は吸清呼濁して、宗気を生成する物質の原料を提供し、生成された宗気は肺が呼吸を主るための基本動力となる。 吸清するのは腎なので、喘息での吸気困難時は腎経の太谿や照海を取る。
◎「一身の気を主る」 肺は呼吸を主る機能を持つ。
観察してみよう
最近、全体的に暗淡紅(紫)舌で、白苔が多い患者さんがよくみられる。これはお血と湿のために上焦、特に肺が滞っているためと考えられる。
冷房の中で冷たいものを取るので水は下に降り、膝や腰が痛み、頭に血が昇り、朝は物憂くてイライラし、自律神経失調やめまいが多くなる。
松康泉の温陽利湿で湿をとり、水の出口を作るためにタンポポを使うとよい。温灸は百会、耳、中府がよい。
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