【骨髄異形成症候群とは】
骨髄異形成症候群とは、造血幹細胞の遺伝子や染色体がわずかに異常を起こし、きわめてゆっくりと血液成分全体に異常が起きて、白血球、赤血球、血小板のどの血球も減ってしまう病気である。 60歳以上の高齢者に多い病気で、患者のうち20%程度が急性白血病に転化するため「前白血病状態」と呼ばれることもある。 白血病化した芽球の割合が20%以上であれば急性白血病、それ以下であれば骨髄異形成症候群に区別される。
【骨髄異形成症候群の症状】
骨髄異形成症候群では正常な血液細胞が造られないためにさまざまな症状がでる。 正常な白血球は細菌やウイルスが体内に侵入した際にそれを排除する免疫の役割を持つが、骨髄異形成症候群のために白血球が減少すると、感染症にかかりやすくなったり、原因不明の発熱が起こることがある。 正常な赤血球は全身に酸素を運ぶ。骨髄異形成症候群になると赤血球の減少により、動悸、息切れ、全身の倦怠感、顔面蒼白などの貧血症状が現れる。 血小板は出血を止める機能を持つ。骨髄異形成症候群のために血小板が減少すると歯茎や鼻から出血したり、出血斑ができたり、青あざができやすくなる。
【松抽出物質が細胞の分化を誘導する】
前述のとおり、骨髄異形成症候群は、造血幹細胞の遺伝子や染色体が異常を起こし、造血細胞に異常が起きるため、白血球、赤血球、血小板の全ての血球が減少する病気で、完全に正常な血液細胞が造られないという特徴がある。前白血病と言われることもあるこの病気においては、骨髄細胞が正常な血液細胞へ分化できなくなる。 ある植物成分が細胞の分化を誘導することが判明した。松節にはその成分が多く含まれている。その成分は骨髄細胞をリンパ球やマクロファージへと誘導し、未熟骨髄細胞を抑制する。アメリカでは効果が認められた報告がすでに4例ある。 さらに、松抽出物質はリンパ球やマクロファージを増やし、免疫力を高める。白血病に対する効果も期待できる。
※参考文献: Jpn J Cancer Res. 1986 Jan;77(1):59-64. Partial purification of novel differentiation-inducing substances(s) from hot water extract of Japanese pine cone. Sakagami H, Takeda K, Makino Y, Konno K. 15.
Jpn J Cancer Res. 1986 Jan;77(1):59-64.
日本の松毬の熱湯抽出物から得られる新しい分化誘導物質の部分精製
Sakagami H, Takeda K, Makino Y, Konno K.
ヒト骨髄芽球性白血病患者から採取したML-1細胞の成長と分化においてヒメコマツの松毬(PCE)の熱湯抽出物の効果が調査された。ML-1の成長は3%(v/v)PCEでわずかに抑制され、細胞障害効果は10%以上現れた。成長抑制は、アルファナフチルアセテートエステラーゼ活性を持つ形態的にマクロファージ様細胞に変換するのと同時に起こった。
一方、PCEは投薬することでFcレセプターを増加させ、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)減少活性を最大3%増加させた。その効果は3%以上減少した。細胞毒活性のほとんどはエタノールを用いてPCEから抽出され、分化誘発活性を含む不溶性の沈殿物から分けられた。分化誘発活性は、特定の活動において260倍増加し、Sephadex G-200ゲルろ過の空隙容量近くで溶出した。
<解説>
この論文の最大のポイントは「松の熱湯抽出物から得られる新しい物質はマクロファージ様細胞への変換を促進する」ということである。 「ML-1の成長がわずかに抑制され、細胞障害効果が現れ」るので、癌細胞障害効果が現れ、白血病の骨髄芽球を阻止する。 「成長抑制は、アルファナフチルアセテートエステラーゼ活性を持つ形態的にマクロファージ様細胞に変換するのと同時に起こった」という箇所は、松抽出物質が骨髄細胞のマクロファージへの分化を誘導していることを明らかにしている。
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