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学校で中医学の先生から陰虚潮熱は夕方から夜間にかけて発熱が起こり、陽虚潮熱では午前中の発熱が見られると教わりましたが、なぜそうなるのか良くわかりません。午前中はだんだん外界の陽気が強まり、夕方から夜間にかけては陰気が強まることと当然この潮熱は関連していると思うのですが、詳しい説明をしてください。よろしくお願いします。
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| (鍼灸学校生からの質問) |
■ | 回答: 神戸東洋医療学院 医学博士 邵輝 |
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潮熱は毎日一定の時間に発熱する病症です。弁証では陽明腑実・陰虚血虚・脾胃気虚・暑熱・オ血に分類されます。 陽明腑実の潮熱は表の邪気を解除できないことで、邪気が体内に侵入して熱が生じることを指します。その邪気は陽明に入り、腸内に留まるため、腹痛や硬便を招き、『傷寒論』の陽明病となります。この場合、瀉下剤の承気湯で熱を降ろします。陽明の気は午後の4〜8時の間が盛んなため、熱は夕方に旺盛となります。風邪や肺炎など高熱の患者の場合、いったん解熱した後に潮熱がしばしば見られます。高熱の後に熱がすっきり下がらず、ダラダラと続きます。この場合、瀉下剤を使い、陽明大腸内の熱を除きます。
陰虚血虚の潮熱は陰虚体質の人、又は汗・嘔吐・下痢・出血などにより過量な陰液が体から漏れて陰液が不足し、気とのバランスが崩れて虚熱が発生することを指します。『素問』調経論篇の「陰虚すれば内熱する」という言葉はそのことを指しています。さまざまな慢性病や結核など感染症の後に見られます。「骨蒸労熱」という病名もあります。その特徴は午後に潮熱を起こします。 觀オが赤い・五心煩熱・寝汗・舌紅・脉細数の症状が見られます。これは虚熱が逆上しているということです。治療は滋陰養血で熱を清する滋陰降火湯を使います。
脾胃気虚の潮熱は労倦内傷・飲食不節のため中気不足となり、中気が下がることで、陰火が上衝し、脾土で潮熱が起こることを指します。『素問』調経論篇は上焦が運行失調になると、下オが通じなくなり胃熱が胸に蒸すために内熱を生じるとしています。脾胃気虚の潮熱は午前中に発熱し、午後に熱が消えます。また、他の臓器の気虚を伴う場合は午後に発熱をすることもあります。熱は低く、疲労・自汗・脉細弱の症状が見られます。補中益気湯はその潮熱を治療する名薬です。
オ血の潮熱は、@外傷によるオ血、A冷えにより気血が留まるオ血、B熱病(伝染病)が原因の血中の熱によるオ血の場合があります。オ血があるので、血が詰まり化熱を伴います。その熱は陰分の時間である午後又は夜中に発生します。皮膚にシミなどのオ血や乾燥が生じ、舌が紫色あるいは青色の症状を呈します。治療は喀血去オの血府逐オ湯を使います。
暑熱は子供に良く見られる症候です。口渇・食欲がない・元気がないなどの症状が見られます。原因は子供の場合、陽気および陰気がまだ十分でないため、夏の湿熱が体内に侵入して熱が出るのです。秋になると自然に治りますが、清暑益気湯を用います。
潮熱は裏症です。虚実がありますが、実証の場合は外感が多く熱が高くなります。虚証の場合は気血虚が原因ですので、熱が低く、病期も長くなります。李東垣は『脾胃論』の中で「火(邪気)と元気は共存できず、邪気が強いために熱が出て、気が盛んになると熱が下がる」と述べています。例えば、脾胃気虚の潮熱は午前に熱が出て、午後には消えます。熱の邪気は朝から脾胃の気が上昇することにより下がります。虚熱の潮熱は夕方に熱が出ますが、陰血の気が夜に増強することにより収まります。
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