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タンポポがなぜ不妊をはじめとした婦人病に効果を上げるのか。
(1)ホルモンって何?
ホルモンという言葉はギリシア語で「呼び覚ますもの」
「興奮させるもの」「刺激するもの」といった意味の言葉。
定義:
1.ホルモンは体内にある細胞でしか作られない化学物質で、その数は70種類以上存在するとも言われる。
2.脳の視床下部、甲状腺、卵巣、睾丸などの内分泌腺で生産、貯蔵され、刺激に応じて血管を通って分泌される。
3.それぞれのホルモンには各「標的細胞・器官」があり、そのはたらきをコントロールする。
4.ホルモンは代謝の調節を行う。
↓
ホルモンは「ある器官からある器官に情報を伝えるメッセンジャー」と考えることができる。
(2)なぜホルモンのバランスが崩れるのか?
体の機能に問題がなければ、ストレスが大きな原因として挙げられる。
視床下部はホルモンの分泌にとって重要な器官であるが、ストレスがかかるとうまく働かなくなり、ホルモンバランスが崩れて体の不調を引き起こす。
(3)なぜ不妊において「ホルモンのバランスが崩れる」ことがそんなに重要なのか?
●現代人に不妊が増えている理由。
・高齢出産
・環境ホルモンやストレスによるホルモンのアンバランス
・冷え
1.女性の体におけるホルモンの流れ
●視床下部と脳下垂体について
視床下部の役割:
血流中のホルモン量をチェックして常に適正なホルモンの量を体に流すように調整する。
妊娠に関して、視床下部は2つの事を行っている。
1.血流中のエストロゲンとプロゲステロンの量を監視する。
2.血流中のエストロゲンやプロゲステロンの量が少なくなると、GnRH(gonadotropin releasing hormone:ゴナドトロピン放出ホルモン)
、性腺刺激放出ホルモン)を出す。
※GnRH: 「ゴナドトロピンを放出するホルモン」、すなわち「ゴナドトロピンを出せ!」と命令するホルモン。
視床下部から出たGnRHは、血流にのって脳下垂体に行く。
GnRHを受けた脳下垂体はゴナドトロピン(LH、FSH)を分泌する。
※ゴナドトロピン(gonadotropin)は「性腺刺激ホルモン」で、
1.卵胞刺激ホルモン(FSH:follicle stimulating hormone)
2.黄体形成ホルモン(LH:luteinizing hormone)
の2種類がある。
●FSHのはたらき
1.FSHは卵胞の発育を促す。
2.成長中の卵胞を刺激してエストロゲンを分泌させる。
↓
子宮内膜の増殖が起こる。
※エストロゲン:女性生殖器、女性の二次性徴、乳腺などの発育、維持を促進する。
卵胞を卵に例えると
黄身・・・卵子
白身・・・卵胞
排卵した後に残る卵胞は黄体と呼ばれる。
●LHのはたらき
排卵後はLHが血流にのって卵巣に到達し、黄体を刺激する。
↓
黄体からプロゲステロンという女性ホルモンが出る。
☆ここまでのポイント
視床下部(GnRH)→脳下垂体(FSH、LH)→卵胞(エストロゲン、プロゲステロン)
という流れで情報が伝達される。 |
※プロゲステロン:子宮内膜を厚くするなど受精卵着床の準備をする。乳汁分泌ののための乳腺を準備する。妊娠を維持させるホルモン。
GnRHが出されると、前述のように脳下垂体からFSHが出て、卵胞からエストロゲンが出るので、エストロゲンの量が増える。
逆にエストロゲンの量が多いときは視床下部はGnRHを出さない。
このようにホルモンに関する情報を整理し、フィードバック調節の中枢となるのが視床下部である。
☆ここまでのポイント
視床下部が状況を判断して命令を下している。
●視床下部の弱点
視床下部は精神状態の影響を受けやすい。
ストレスがかかる
↓
うまく命令を出すことができなくなる。
↓
ホルモンのバランスが崩れる。
↓
体の不調を引き起こす。・・・・不妊
●男性の場合
基本的な流れは女性とまったく同じである。
男性の場合、LHが卵巣ではなくて精巣を刺激してテストステロンの分泌を促す。
↓
FSHとテストステロンが精細管に作用して精子を形成する。
2.原始卵胞、精原細胞が卵子、精子になる過程においてもホルモンが重要な役割を果たす。
(4)タンポポT−1はどうやってホルモンのバランスを調整するのか?
邵輝先生の大阪大学での研究より
【要旨】
Sprague−Dawley系雌幼若ラットを使用して、タンポポT−1の排卵への効果および視床下部−下垂体−性腺系への影響を検討し、LH−RH分泌を中心として考察を加え
た。
脳内神経伝達物質、ニコチン性アセチルコリン受容体、視床下部内LH−RHの有意の増加が観測され、視床下部より上位中枢への効果が推察された。タンポポT−1の視床下部、下垂体を中心とする排卵機能への賦活作用が推察された。
※LH−RH:黄体ホルモン放出ホルモン
1 排卵への効果
実験1.視床下部、下垂体機能の活性化
自然の周期であれば、生後38日目に排卵が認められるSprague-Dawley系雌幼若ラットを使用する。
1.生後25日から31日までタンポポT−1を単独で1週間投与したもの
2.生後25日から31日までタンポポT−1とhuman menopausal gonadotropin(hMG)を併用して1週間投与したもの
3.hMGを単独投与したものにおいて、それぞれ排卵をみた。
↓
1のタンポポT−1単独投与では54%
2のhMGとの併用投与では89%
3のhMG単独投与では65%
に排卵が認められた。
これらの事実はタンポポT−1が直接または間接的に視床下部、および下垂体機能を
活性化することを示唆している。
※hMG:ヒト閉経期尿中ゴナドトロビン 卵胞の発育を促す
実験2.排卵率が上がる
Sprague-Dawley系雌幼若ラットを用いる。
生後38日よりタンポポT−1を体重1kgあたり36mgを連日経口投与し、排卵について両側卵管内の卵子の数を顕微鏡下に確認した。
結果は、タンポポT−1投与群の排卵は、対照群と比較して20%の上昇が認められた。
2 中枢への作用
実験1.タンポポT−1は下垂体内のLH、FSH量を増加させる。
Sprague-Dawley系雌幼若ラットを用いる。
タンポポT−1を体重1kgあたり36mgを連日経口投与
↓
下垂体内のLH、FSHについては生後29日で変化が認められた。
血中LHは対照ラットの0.75ng/mLに対して、タンポポT−1を投与したラットは1.1ng/mLであった。
また、血中FSHは対照ラットが1.1ng/mLであったのに対して、タンポポT−1を投与したラットは5ng/mLであった。
↓
有意な増加が認められた。
実験2.神経伝達物質への影響
タンポポT−1が脳細胞のレベルでタンポポT−1がどのような影響を与えているかについて調べた。
同じラットにおいてタンポポT−1を投与した生後29日目のラットの脳中のノルエピネフリン(NE)、ドーパミン(DA)、セロトニン(SR)を測定した。
↓
タンポポT−1を投与したラットは対照群と比較して、NEは7.2倍、DAは6.8倍と明らかな増加を示した。SRについては0.15倍と増加傾向のみであった。
【考 察】
幼若ラットにおいて、タンポポT−1の排卵促進作用が認められた。視床下部内LH-RHの増加、下垂体内LH、FSHの増加が認められ、作用部位としては、視床下部−下垂体系として考える。
さらに、神経伝達物質、NE、DA、SRの増加がみられたが、これらの物質は痴呆とも関係が深いとされており、タンポポT−1の薬理作用の多様性が期待される。
タンポポT−1は脳下垂体を直接活性化して、混乱した情報伝達の流れを正常にする。
ここでのポイントは、単にホルモンを増やすというのではなくて、「バランスをとる」というところにある。
<参考>
Q:現在、FSHの値が高い。医者には黄体ホルモンを抑えなければいけないといわれているのに、タンポポがホルモンを活性するので逆効果ではないか?FSHを下げる効果はあるか?
A:タンポポT−1はこのような場合にも有効である。
フィードバック機能が働いていない状態。すなわち、ホルモン量が多すぎれば少なくする必要があるし、少なければ増やす必要があるのだが、その指示がうまく出ていない。タンポポT−1のホルモン調整作用が有効に働く。
■関連事項
1.更年期障害
加齢に伴い卵胞の機能が衰え、血中のエストロゲンの量が少なくなる。
視床下部はエストロゲンの量をチェックして「エストロゲンの量が足りない」と判断し、GnRHを分泌する。これを受けて脳下垂体からFSHが分泌され、卵胞からエストロゲンを出そうとするが、既に高齢で卵胞は弱っているためにエストロゲンを出すことができない。
視床下部は「エストロゲンを出すように命令を出したのにエストロゲンが増えていない。」と判断し、もう一度命令を出す。(GnRHを分泌する。)
しかしエストロゲンを出す機能が衰えているため、いくら命令がきてもエストロゲンを出すことはできない。
視床下部は「なぜ命令しているのに増えないのだろう?」と思いながら、命令を出し続ける。(GnRHを分泌し続ける。)
その結果、GnRHは増加する一方でエストロゲンは増加しないというホルモンのアンバランスが起こる。このホルモンのアンバランスが更年期障害の原因と考えられている。
(参考)
男性の更年期障害も、同じくテストステロンの量が少なくなることで起こると考えら
れている。
2.生理痛
生理痛は二種類に分類される。
(1)器質性月経困難症
何らかの病気が痛みの原因となっている。
主な原因:子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮の位置異常など。
(2)機能性月経困難症
病気が原因ではなく、起こり、とくに若い女性、妊娠や出産を経験していない女性に多いといわれている。
主な原因:
・ 脳と卵巣にある性腺内分泌系(生理をコントロールするホルモンを分泌する)や、その他の内分泌系(甲状腺や副腎)の働きがスムーズでない。
・ 経血を押し出す力
・ 冷えやストレス
生理痛は子宮内膜がはがれるために起こるものではなく、子宮内膜をはがすために子宮が収縮していることで生じる。
生理の時に子宮を収縮させるのは、プロスタグランディンというホルモンの働きによるものである。お産の時に子宮収縮の波を起こして赤ちゃんを内側から押し出してあげるように身体が働くのも、このホルモンが多量に分泌されるからである。
生理の時もこの子宮収縮を強める作用のあるプロスタグランディンが分泌され、生理痛が起こる。
初潮から数年、まだ若くて子宮が未成熟の場合、子宮口が狭いために生理の血液が子宮外にうまく流れでない場合がある。子宮が強く収縮することで、はじめて血液が子宮から押しだされ、このときに強い痛みを伴う。
3.生理前のいらいら
生理前にプロゲステロンが出る。
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手足をむくませる。
顔が火照る。
プロゲステロンの影響で血管が拡張することによって血管拡張型の頭痛が起こる。
プロゲステロンが多く分泌されると、腸の蠕動運動が弱まって便秘になりやすい
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